2018年7月31日火曜日

JT65/JT9/FT8の運用環境について/うまく運用できないときの考え方

JT65が流行りだしてからすでに何年も経ち、JT65/JT9/FT8を始めるためのリグやソフトの設定については、CQ誌を始めとして各サイトにて紹介されています。
このブログでは、具体的な設定方法は機種に依存するので記載していませんが、基本的な接続に関する考え方を説明したいと思います。
新しい機種/他のソフトを使う場合に、具体例を検索して調べると同時に動作原理に立ち戻って問題点を特定するのに役立てば幸いです。
(2018/08/02 更新)

パソコンと無線機を接続して、JT65/JT9/FT8といったデジタル通信をする場合、以下の3つの制御が必要となります。このうち、CAT制御はしなくても最低限の運用は可能ですし、PTT制御は無線機のVOX機能で切り替えることも可能です。ただ、この3種類が揃っている方が便利です。

1) オーディオ入出力
  変調のかかった音声を送受信するためのマイク/スピーカー相当の入出力です。
2) PTT制御
  無線機を送信状態に切り替える制御をします。
3) CAT制御
  CAT制御でリグの現在の周波数/モードの確認や設定、無線機をコントロールします。

受信や送信ができない場合、この3つのうちどの制御がうまく行っていないのかを考える必要があります。
それぞれの制御にて、ハードウェア(ケーブル等)の接続がうまくされていることとソフトウェア(各種設定)がうまく設定されていることが必要で、順に確認していくことになります。

A) 受信してもウォーターフォールに信号が表示されない→オーディオ入力の設定が違っている/またはオーディオ入力のレベル設定が低すぎる
B) 受信はできるが、無線機が送信状態にならない→PTT制御がうまくいっていない
C) 無線機は送信状態になるが、パワーが出ない→オーディオ出力の設定が違っている/またはオーディオ出力のレベル設定が低すぎる
D) CATでの無線機制御ができない→CAT制御の設定が違っている可能性が大きい

これらのトラブルが大半ではないかと思われます。

1) オーディオ入出力の設定確認
無線機とパソコンの間でオーディオの信号がやりとりできるようになっているかを確認します。

  • 無線機内にオーディオインタフェースを持っている場合

USBポートでパソコンと無線機が接続されていて、Windows OS側で無線機のオーディオデバイスが認識されているかを確認します。
認識されていない場合は、USBケーブルが正しく接続されているか、オーディオインタフェースのドライバーがインストールされているかを確認してください。
また、無線機側設定で、オーディオ入出力がUSBポート経由でできるように指定がされていることを確認します。

  • 無線機にオーディオインタフェースを持っていない場合

パソコンと無線機の間に外部オーディオ装置が存在する場合は、正しく接続されているかどうかを、パソコン本体のオーディオ入出力を使用している場合は、オーディオの入力と出力の両方が正しく無線機と繋がるようになっているかを確認します。
この接続の場合は直接無線機とは接続されずに、パソコンと無線機の間にインタフェース装置が介在している場合が多いかと思います。

接続が正しい場合は、使用している通信ソフトのオーディオ設定が正しくこれらのインタフェースを使用する設定になっているかを確認します。
また、オーディオインタフェースの音量設定も適切になるように調整してください。
ここまでが全て確認できれば、少なくとも受信はできるようになるかと思います。

2) PTT制御の設定確認
無線機とパソコンの間でPTT制御のための接続がされていることを確認します。
無線機に直接USB接続している場合は通常はUSBインタフェース経由でPTT制御が可能かと思います。
中間にインタフェース装置がある場合は、パケット通信用のコネクタ(8ピンDIN/mini DIN等)でオーディオ/PTT制御をしていると思われます。
VOX制御の場合は、PTT制御の接続は不要です。

使用しているソフトウェアのPTT制御方法が無線機と合わせて正しく設定されているかどうかを確認します。
PTT制御には以下の3つがあるかと思います。
 A) RTS制御もしくはDTR制御
 シリアル(COM)ポートの、RTS制御端子もしくはDTR制御端子のON/OFFによって送受の切替を実行します。パソコンと無線機の接続方法としてこの方式が使える場合は、PTT制御としてこの設定をするのが良いと思います。
 無線機によっては、パケット通信用のコネクタやUSBインタフェースのシリアル(COM)ポートでのPTT制御ができるように無線機側の設定変更が必要となるかと思われます。
 B) CAT制御
 RTS(またはDTR)制御で送受が切り替えられない場合、CATのコマンドをCAT制御のシリアル(COM)ポートで送ることで送受の切替が可能です。この場合は、CAT制御ができている必要があります。
 C) VOX制御
 RTS(またはDTR)制御もCAT制御も出来ない場合は、無線機のVOX機能を使っての送受切替も可能です。ただし、VOXで送信に切り替わる遅延時間などをうまく通信できるように調整する必要があるかも知れません。もちろん、無線機はVOXによる送受切替の設定にする必要があります。

3) CAT制御の設定確認
最近の無線機では、シリアル(COM)ポートでのコマンドのやりとりで無線機をコントロールすることが可能になっています。少し前の無線機では、無線機にシリアルポートがあって、パソコンのシリアルポートとケーブルで接続していましたが、今ではUSB接続をして無線機内の仮想的なシリアル(COM)ポートが認識されることが増えました。
無線機の機種によりますが、少なくとも八重洲機(SCU-17も同じ)ではPTT制御用のシリアル(COM)ポートとCAT制御用のシリアル(COM)ポートの2つがパソコンで認識されます。これらの2つは完全に用途が違うのでそれぞれ間違えないようにしてください。
CAT制御用のシリアル(COM)ポートは、シリアル通信のための設定が必要となり、通信のパラメータを無線機とパソコンで合わせる必要があります。
通信スピード(4,800bps~19.2(38.4)kbpsなど)、通信ビット数(8ビット/7ビット)、ストップビット(1ビット/2ビット)、ハンドシェーク(フロー制御)などを無線機とパソコンで合わせます。詳細内容は無線機のマニュアルに記載があるかと思います。
また、無線機(メーカー)によってCAT制御のコマンドが異なりますので、適切な設定にする必要があります。

ハンドシェーク(フロー制御)
これらの設定のなかで、分かりにくいのがハンドシェーク(フロー制御)の設定です。
一般的にシリアル通信では、受信側が送信側のデータ送出を受けきれずに「ちょっと待って」と、通信を一時止める制御ができ、ハンドシェーク(フロー制御)といいます。
パソコンソフトウェアのハンドシェーク(フロー制御)の設定は、None/XON・XOFF(ソフト制御)/RTS(ハード制御)の3つあります。
これも無線機と合わせる必要があります。
ハンドシェーク(フロー制御)には以下の3種類があります。

None:フロー制御をしない。送信側は相手の状況を検知せずにデータを送信します。
ソフトウェア制御(XON/XOFF):受信側からXON(cntl-Q)とXOFF(cntr-S)の文字をシリアル通信の符号データとして送る事で制御する。
ハードウェア制御(RTS):シリアルポートのRTSピン信号のON/OFFで行う。RTSをONに固定するような設定がある場合は、Noneと同様の動作になりますが、シリアル通信は成り立ちます。

これらの設定が合っていないとCAT制御ができない場合があります。「場合がある」と書いたのは、Noneの設定でもRTSの信号をずっとONにするソフトウェアであれば、合っていなくてもCAT制御できる可能性があるからです。

以上、3つ(オーディオ、PTT制御、CAT制御)のインタフェース設定が正しく設定されていればうまく運用ができるかと思います。なにかうまく動かない場合があるときは、この3つのどれがうまく行っていないのかを順に確認してみてください。問題点が見つかればしめたものです。

注意:1つのシリアル(COM)ポートは、通常は1つのソフトウェアでしか接続/制御できません。
例えば、ログソフトで無線機の情報を取得することとJT65/JT9/FT8のソフトで無線機を制御する場合などはCAT制御のシリアル(COM)ポートを共有することが必要となります。
複数のソフトウェアでシリアル(COM)ポートを共有したい場合は、シリアル(COM)ポートの共有ソフトウェアを別途インストールする必要があります。
この場合は、元のシリアル(COM)ポートのポート番号と通信するソフトウェアにて設定するポート番号を、同じ番号にする共有ソフトウェアと異なった番号にする共有ソフトウェアがありますので、設定時に注意してください。