2018年5月6日日曜日

小規模設備での中級者DXCC考

2018年3月末に、DXCC交信難易度リストなるものを公開させていただきましたが、初中級レベルでのDX交信のアプローチに関して実経験談から少し考えてみたいと思います。
私自身は、DXCC 250をやっとコンファーム出来た程度なので、まだまだ中級レベルかと思います。
更新(2019/11/08)

DXCC100まで
エンティティ数が50程度までであれば、コンディションにもよりますが、それほど工夫や苦労をせずに交信可能かと思います。私自身、2011年11月に初DX交信をしたのが、軒先モービルホイップで10m/JT65モードでのブラジル局でした、同じ日にUSA、ウルグアイ、フィリピン、ロシア(アジア)と交信、2011年11/12月のうちには31エンティティの交信ができました。もちろん、すべてが難易度"C"のエンティティでした。
比較的小規模でもJT65ならDX交信ができそうだと思った私ですが、さすがにモービルホイップでは難しいと思って、11月のうちに国産の5バンドGP(CP5HS)に変更しました。
翌年7月、Cushcraft社の6バンドのバーチカルアンテナ(R6000)に替えるまでに、52エンティティと交信できました。
2012年12月には、WARCバンドを含む2エレ(18/24/50Mhz)を追加し、2013年2月に100エンティティとの交信を達成しました。
この時に感じていたことは、「聞こえないと交信できない」→「アンテナのグレードアップが重要」と言うことでした。これは今でもずっと感じていることです。
JT65でなら小規模設備でもDXができるのは間違いではないのですが、なんの工夫も努力も不要と言う意味ではありません。2012年頃であればJAからのHFでのJT65運用局も少なく、CQを出せばあちこちから呼ばれました。また、多少珍しい局が出ていても、それほど大きなパイルにはならずに何回かトライすると交信ができました。
2018年ではどうでしょう。JT65は交信に長時間かかることから相手局もかなり減っているように思われます。1回の送信が15秒とJT65の1/4の時間で行えるFT8が主流になっていて、JT65と比べると弱いシグナルはデコードがしにくくなったり、多数の大規模設備局が参画してきて、パイルになるとパワーを掛けないとなかなか交信できない状態となっています。しかも、現在のようにコンディションが悪いと、アンテナが貧弱だと相手局が聞こない(デコードできない)ことも多い状況です。
より弱い局と交信(受信)するために、釣り竿アンテナ+ATUの環境でもグランドを強化したり、同じアンテナでもノイズの少ない開けた場所に移動して運用することで、交信範囲が広がってきます。もちろん、10Mhz帯、14MHz帯といったDXにより適したバンドに出たり、よりパワーを出すために上級資格を取ることもかなり有効です。
ちょっとした工夫や努力をすることでDXCC100達成はそれほど高い壁ではなくなると思います。

DXCC150~250へ
DXCC100を達成したあと、150~200へ到達するには、タワーを建てるなどの大規模設備の所有ができないのであれば、ある程度時間をかけてコンディションの良い期間に運用する必要があるかと思います。
2013年1月に、R6000と同形式で、7/10MHzから50MHzまでの8バンドに出られるHy-Gain社AV-640に変更。私のDXCC200交信は2015年5月、DXを追いかけはじめて3.5年で達成できました。ちょうどコンディションが良い時期であったことと、この前年にFTdx3000を導入して受信性能も上がったことが大きな要因だったと思います。LP-PAN2というSDRを利用して、FTdx3000でもデュアルワッチを出来るようにしたのは、「CQ ham radio 2017年4月号」に記事を書かせていただきました。DXペディションのパイルを抜くにはデュアルワッチがかなり有効な武器になります。
2015年5月には、うちの自宅ではこれ以上のアンテナは難しいだろうと思われるHEXBEAMアンテナを導入し、バーチカルとの2本体制にしました。(ただし残念ながら、このアンテナは1年経たずに、2016年1月の東京の重い湿り雪と強い風で倒壊してしまいました。同時にAV-640も折れてしまいました。)
HEXBEAMは、フォールデッドの2エレ八木アンテナを複数組み合わせたものです。トラップやローディングコイル無しで、14MHz~50Mhzの6バンドに出られます。1フィードで、アンテナ切替も不要で使いやすいアンテナです。
Hy-GainのAV-620/640/680やCushcraftのR6000/R8/R9は長さはありますが、少ない面積で上げられる性能の良いアンテナだと思います。これらは3/8λのアンテナで、国産の1/4λを基本とするアンテナと違ってラジアルが非常に短く(1.5m程度が複数本)、それでいて性能が良いと思います。1/4λのGPだとグランドラジアルにも1/4λが必要になり短縮の影響も大きくなって、調整が難しいようにも思います。
また、バーチカルアンテナは周囲のノイズは拾いやすいですが、打ち上げ角が低くなってDXには向いています
この頃は、Newエンティティが出ているのがスポットされれば、朝の出勤前や帰宅後の夜もワッチをしていました。自宅で平日も運用できる環境があることは、DXCC200程度以上を狙うには有効だと思います。
200を超えるにはDXペディションのパイルへの参加も必要になります。小規模な設備でパイルを抜くにも、いろいろと工夫が必要かと思います。もちろん、パワーを上げることで取ってもらえる可能性が上がりますが、上記、FTdx3000のリグ導入で書いたようにデュアルワッチやスペクトラムアナライザでピックアップしている周波数を探って、そのオペレータのクセを掴むことが、パワー以上の効果を発揮すると思います。
難易度C,B,Aまではこの程度の設備でも十分交信できるように思います

移動運用をメインとして自宅ではほとんど運用されていない友人で、DXCC 200を超えている方もいます。彼は機会を見つけては開けた河原へ移動、17m長ものバーチカルLWを垂直に建ててATUを使って160m~6m、20m用のデルタループアンテナにATUで30m~6mの運用をしています。移動運用はノウハウの塊で、いろいろな工夫があるようです。
出力50Wでの運用ですから、出力だけが必要なのではないことがよく分かります。

DXCC250以上へ
私はまだ経験していない領域ですが、DXCC250を超え300以上に達するには、長期間(2サイクル以上)を必要とすると感じています。
少しでも増やそうと思うと、あとは大規模設備の仲の良い友人に設備共用で開局させてもらうのも手かと思います。実は私も、これはというDXペディション時には2エリアの友人の設備をお借りしています。ランクAAAは、特にコンディションの良くない時期では小規模な自宅環境ではかなり難しいです。(もちろん、自宅でタワーを建てられる環境であればその限りではありません。)
それでも、自宅環境にこだわるのであれば、コンディションと運と時間をかければ決して不可能ではないと考えています。

[補足]FT8等デジタルモード追加(2019/11/08)
2010年頃から、JT65A/JT9といったデジタルモードがHF帯でも普及してきてDXCCの獲得に貢献してきています。JT65A/JT9では1回の送信/受信タイミングが1分毎なので、1交信を完了するのに5,6分間かかってしまいます。そのため、JT65A/JT9のDXペディション運用は皆無でした。FT8が開発され、送信時間が1/4程になり、またFox/Houndモードといった同時に複数局との交信が可能な方式が実装されて、RTTYよりもメジャーなデジタルモードになりつつあります。RTTYよりも設備の規模が小さくても交信がしやすくなっているため、DXCCを効率的に増やすのには必要になってきているように感じられます。
また、運用方法の是非はともかく、CWやSSBで運用しているオペレーターが隣に設置したリグで同時にFT8の運用をすることも可能ではないかと考えられるため、運用局のトータル交信数の増加にも貢献するように思われます。
FT8運用では送受の切替などはプログラム任せで、ほぼ自動で交信が成立するため運用を避ける方もいらっしゃるようですが、小規模設備でのDXCC獲得には必須のモードになっていると考えられます。
なお、自動での交信が可能とは言え、他の局との同周波数での送信を避けるなど運用方法の工夫の余地はあるでしょう。

DXCC 現状(2019/11/01):
Workedは、Mixed 273、Challenge 1110
QSLカード+LoTWの合計では、Mixed 264、Challenge 1017 コンファーム
(うち、LoTWでは、Mixed 250、Challenge 962)

DXCC 現状(2018/05/01):
Workedは、Mixed 268、Challenge 1072
QSLカード+LoTWの合計では、Mixed 254、Challenge 972 コンファーム
(うち、LoTWでは、Mixed 240、Challenge 907)

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